SPECIAL
TALK
06

特集記事

企業の垣根を越えた女性たちのネットワーク「やまぐちけんせつ小町の会」

近年、女性の活躍が目覚ましい建設業界。もっと女性が働きやすい職場環境づくりのために様々な取り組みが行われる中で、2024年6月に企業の垣根を超えた女性たちのネットワーク団体「やまぐちけんせつ小町の会」が発足しました。 今回は、初代会長に選任された梅澤知栄さん(株式会社技工団)、会員の藤井さん(井森工業株式会社)、大森さん(日立建設株式会社)の3名に、「やまぐちけんせつ小町の会」発足の経緯や活動内容、今後の展望などについてお聞きしました。

SPECIAL TALK 01

「やまぐちけんせつ小町の会」の発足の経緯について教えてください。

●やまぐちけんせつ小町の会 会長 梅澤知栄さん(株式会社技工団)

 建設業界では、業界全体を活性化させるために男女を問わず誰もが働きやすい業界とすることを目的に、官民が一体となって、女性の入職促進や就労継続に向けた様々な取り組みを実施しています。その一方で、新・担い手3法、建設キャリアアップシステムなど建設産業を取り巻く環境が変化しています。こうした取り組みをさらに促進するためには就業の継続が大きな課題であることが顕在化したことから、建設産業で働く全ての女性が「働きがい」と「働きやすさ」の両立により、就業継続を実現することを目的としつつ、「働き続けられるために環境整備」を中心に「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を策定されています。
 こうした背景の中で、県内の建設産業への女性の就業率がまだまだ低く感じられるので、まずは女性のみならず誰もが働きやすい環境づくりへの改善や魅力ある建設産業をPRすることが必要となってきます。
 一方、(一社)山口県建設業協会の会員企業に所属するけんせつ小町の方々からも、職場に女性技術者が少なく、同じ境遇の方たちと仕事の悩みや、産休・育休のことなど女性ならではの相談や意見交換をしたり、会社の垣根を越えてけんせつ小町同士の繋がりを持ちたいとの声があがったことがきっかけとなり、山口県内の建設企業に従事する女性の就労改善および県内建設企業への女性入職を図ることを目的に令和6年6月に「やまぐちけんせつ小町の会」を発足しました。現在の会員数は、19企業36名となっており、山口県建設業協会に事務局を置いています。

SPECIAL TALK 02

活動内容について教えてください。

●やまぐちけんせつ小町の会 会長 梅澤知栄さん(株式会社技工団)

 建設産業の魅力を発信するため、2024年度はイベント参加による広報活動を行いました。6月に山口きらら博記念公園で開催された「令和6年度やまぐち建設産業魅力発見フェア」では、けんせつ小町との相談ブースを開設し、生徒の皆さんに女性技術者から建設業における女性の働き方についてお話をさせていただきました。
 また、10月に道の駅きららあじす横広場において開催された「やまぐち建設フェス」では(一社)山口県建設業協会と一緒にVRでのバックホウ操縦をレクチャーしながら、建設業における女性の活躍をPRしました。当日は4300人の来場者で賑わい、ブースで用意したミニカー300個がなくなってしまうくらいの盛況ぶりでした。
 そのほか、会員同士の交流を目的にランチ会を開催しました。和やかな雰囲気の中で女性同士積極的な交流が図られたと思います。

SPECIAL TALK 03

会長の「けんせつ小町の会」に対する思いとは?

●やまぐちけんせつ小町の会 会長 梅澤知栄さん(株式会社技工団)

 私がこの職業に就いた時は、建設業界には女性技術者がほとんどおらず、会社にも私1人だけだったため、女性ならではの悩みを相談する相手がいませんでした。「やまぐちけんせつ小町の会」が出来る前にも女性入職促進委員として活動させて頂いていたのですが、その中で県内のほかの建設企業の女性技術者の方と知り合い話ができることがとても心強かったんです。今では、建設業界にも女性が増えてきましたが、会社によってはまだ1人しかいないところも多いと聞きます。そんな方がこの会を通じて話し合える仲間ができれば嬉しく思いますし、精神的な支えにもなると考えています。
 また、私たちが活躍することが建設業界の抱える人材不足問題の解消にもつながると思いますし、女性がいることで現場に活気も生まれますので、横のネットワークを強化しながら業界を盛り上げていければと思っています。

SPECIAL TALK 04

建設業界で働くにあたって、女性の視点やスキルはどのように活かされていると思いますか?

●会員:藤井芽嬉さん(井森工業株式会社)

 女性は、コミュニケーション能力に長けていると思うので、現場での社員同士の会話が生まれやすくなると思います。コミュニケーションが活発になる事により、現場の雰囲気が明るくなるだけではなく、仕事もよりスムーズに進みやすくなったりしますし、そういった形で女性ならではのスキルとして今後活かされていくと思っています。実際に、私も上司や職人さんたちから、男性だけの現場だとピリピリする事があったけど、女性がいる事により明るくなり仕事がしやすくなったと仰っていただけました。
 建設業界は社外の協力会社の方々との仕事もたくさんあるので、この女性ならではの会話力をこれからももっと心がけていきたいなと思います。

SPECIAL TALK 05

「やまぐちけんせつ小町の会」の活動に参加してみていかがですか?

●会員:藤井芽嬉さん(井森工業株式会社)

 入社当初は、男性社員が多いこともあって、正直やっていけるかどうか、また体力的にもついていけるか不安がありました。でも、実際に働いてみると、どの方も気さくで優しい方ばかりで驚きました。仕事面でも、もちろん体力仕事はありますが、それだけではなくデスクワークもあり、バランス良く働くことができています。
 「けんせつ小町の会」には、私と同じ年代の方もたくさんいますし、会社は違えど同じ業界で頑張る仲間として刺激を頂けるので、イベントなどで顔を合わせると、また明日からも頑張ろうと思うことができます。また、会として女性の働きやすい職場環境整備にも取り組んでもらっているので、これからもっと働きやすくなると期待しています。
 女性はどうしても建設業界に対して、男性社会で怖いイメージや、体力的にもきついイメージがあるかと思います。ですが、良い意味で全くイメージ通りじゃないギャップばかりで、思っていたよりとても働きやすい業界になってきています。何よりも、自分の仕事が形として現れる仕事なので、達成感ややりがいは他の仕事と比較しても大きいと思います。だからこそ、女性が活躍することが当たり前になればいいなと思います。

SPECIAL TALK 06

日々の業務で学んだことや感じたことは何ですか?

●会員:大森実佳子さん(日立建設株式会社)

 現在私は、現場監督として勤務しています。最初の頃は、男性社員との体力の差を感じてしまって、それでも無理して頑張ってついていかなくちゃいけないと思っていました。でも、上司やけんせつ小町の方のアドバイスで、体力的に出来ない事や難しい事は、無理をせずに手伝ってもらうことや任せることが、仕事の効率も上がっていい結果に繋がっていくという事を学びました。
 「相談することによって手を止めてしまうかな?」と最初は少し心配していたのですが、どの社員の方も理解してくれてすぐに対応してくださるので、「頼ること=悪いこと」ではないんだと実感できました。こういう悩みも、「けんせつ小町の会」のメンバーだとすぐに共感してくれるので、気持ち的にもすごく楽になることができます。

SPECIAL TALK 07

けんせつ小町として建設業界に期待することは何ですか?

●会員企業:大森実佳子さん(日立建設株式会社)

 現場の環境が女性スタッフにもストレスなく働きやすくなるようになればいいなと思います。例えば、現場に置いてある仮設トイレが、もう少し使いやすくなってほしいなと思います。女性にとっては使用するのを少し抵抗される方もいらっしゃるかと思うので、今以上に清潔で居心地の良い空間にしていきたいです。また、最近増えてきてはいますが、女性用更衣室がもっと当たり前になってほしいなと思います。トイレや更衣室など、衛生面や身なりについてきちんと整備された空間がもっと広がれば嬉しいです。
 「けんせつ小町の会」を通じて、そんな私たちの声が企業や行政の方々にも届いていけば、女性社員が増えていくんじゃないかと思っています。

SPECIAL TALK 08

最後に「やまぐちけんせつ小町の会」の今後の展望を教えてください。

●やまぐちけんせつ小町の会 会長 梅澤知栄さん(株式会社技工団)

 今後は、活動の幅を広げて、もっと建設業をPRするとともに、会員同士の交流を深めてネットワークの構築を図っていきたいと思います。加えて、他県で先進的な取り組みを行っている団体との意見交換や企業の見学なども積極的に展開していきたいです。
 また、私たちの活動によって、学生の皆さんなど若い世代に建設業の魅力を感じてもらい、1人でも多くの仲間が増えるように頑張っていきたいです。

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