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特集記事

災害発生時における建設業の役割

建設業は単に道路や建物を造るだけの仕事ではありません。地震や豪雨などの災害が発生した際、人々の生命と財産を守り、社会機能を維持・回復させるために極めて重要な役割を担っています。 災害発生直後の応急対応から中長期の復興まで、建設業は警察・消防・自衛隊と並び「第4の防災部隊」として機能しています。今回の記事では、2023年の山口県西部豪雨や令和6年能登半島地震の現場に従事した作業員の方々の声を交え、知られざる災害復旧の最前線とその使命感について詳しくお伝えします。

SPECIAL TALK 01

災害協定に基づいた迅速な初動体制

建設業の役割は、災害が起きてから始まるのではありません。平時から行政機関と災害協定を締結し、有事の際に即座に動ける体制を整えています。

株式会社コプロス/安喰さん:
「災害の恐れがある場合は、国交省や県・市・ネクスコといった各機関から連絡が入ります。私たちが担当している直轄工事の現場からも即座に対応指示が出る仕組みになっています。」

2023年7月の山口県西部豪雨。下関市では線状降水帯が発生し、各地で甚大な被害が出ました。安喰さんたちは、維持業者の日立建設さんとともに、国道191号線が土砂で寸断された現場の最前線に立ちました。

「大型ダンプ10台を投入するなどの対応を行なうため、連絡を受けた担当者がすぐに協力会社や重機の手配に走り、初動の遅れを最小限に食い止める。当日は日曜のため手配は大変でしたが、組織的なスピード感こそが、被害の拡大を防ぐ要となるため迅速に進めました。」

株式会社コプロス/丸山さん:
「当時の現場に責任者として出動しました。山陰線と国道が同時に土砂で塞がれてしまったため、救助や支援のルートを確保する道路啓開が至上命令でした。大型ダンプ10台を投入し、ひたむきに瓦礫と土砂を取り除きました。ダンプの運転手にも勤務時間の限界がありますが、交代要員を何とか手配し、不眠不休の作業を継続。最終的に夜中の12時に通行を再開させました。」

道路は被災地にとっての生命線。それを絶対に止めないという執念が現場にはありました。雨が降り続く中、単に排水するだけでなく、冠水の根本原因を現場で見極め、次に打つべき手を即座に判断する。マニュアルを超えた「現場の経験値」が問われる瞬間でした。

SPECIAL TALK 02

未然に惨事を防いだ「巡回活動」の重要性

建設業の役割は、目に見える被害の復旧だけではありません。日立建設株式会社/中田さんは、予兆を見逃さない巡回活動の重要性を強調します。

「2025年8月の警報発令時、国道9号線の巡回中に法面から異常な流水があるのを発見しました。即座に通行止めを実施しましたが、そのわずか数十分後に付近で土砂崩れが発生しました」。

中田さんの迅速な判断がなければ、走行中の車両が巻き込まれる大惨事になっていた可能性がありました。災害発生の予兆を感じ取り、先手を打って通行規制を行う。地元の道を熟知しているからこそできる、地域守り手の真骨頂です。

土砂崩落現場での撤去作業は、常に危険が伴います。中田さんは当時の復旧作業をこう振り返ります。

「作業中も法面からは土砂が流出し続けているような状況でした。一刻も早く復旧させたいという焦りもありますが、何よりも作業員の安全が最優先です。二次被害を出さないよう、地盤や斜面の状況を細心の注意で監視しながら作業を進めました。」

コンマ45クラスのバックホウ2台や大型ダンプを指揮し、緊迫した空気の中で着実に作業を完遂させる。そこには、プロとしての高い技術力と安全意識が凝縮されていました。

SPECIAL TALK 03

県境を越えた支援。能登半島地震での給水活動

中田さんたちの活動は山口県内にとどまりません。2024年1月に発生した能登半島地震では、国土交通省からの打診を受け、発災わずか4日後には被災地へと向かいました。

「当初は3名の出発隊で、給水車を走らせて富山から能登へと入りました」。断水が続く被災地での飲料水の配布活動。しかし、ここでも現場ならではの課題がありました。「給水車のホースが太すぎて、地元の方が持ってくるペットボトルに水を注ぐとこぼれてしまう。そこで急遽、現場で蛇口を加工して取り付けるなど、自分たちの知識を活かして効率的に給水ができるよう工夫しました」。どのような環境下でも知恵を出し合い、目の前の困っている人を助ける。建設業のノウハウが発揮された場面でした。

過酷な災害現場で作業員たちを支えるのは、やはり地域の方々との触れ合いです。中田さんは能登での出来事が忘れられないと言います。

「山口県のナンバープレートを見て、地元の方が『わざわざこんなに遠いところから、水を運んでくれてありがとう』と声をかけてくださいました。その感謝の言葉をいただいたときは、疲れも吹き飛ぶほど嬉しかったです。給水活動が忙しく、水を持って帰る高齢者の方の運搬まで手が回らなかったことが心残りでしたが、人々の生活に寄り添う仕事の大切さを再確認しました。」

このように建設業は、私たちが普段当たり前のように利用しているインフラを「造る」だけでなく、有事の際には「守り、戻す」という極めて公共性の高い役割を果たしています。

災害リスクの高い日本において、現場で汗を流す建設作業員の存在は、国民の安全・安心な暮らしを支える上で欠かすことができません。彼らの持つ高度な技術と、誰かのために動くという強い使命感によって、私たちの平穏な日常は守られています。「第4の防災部隊」としての誇りを胸に、建設業はこれからも地域の守り手として最前線に立ち続けます。

災害発生時における建設業の役割

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