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TALK
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特集記事
未来の技術者たちへ贈る「建設ゼミナール」〜岩国工業高校で体験型出前授業を開催〜
山口県内の教育機関では、生徒たちが建設業の魅力を肌で感じ、将来の選択肢を広げるための取り組みを積極的に行っています。2025年6月11日、岩国工業高校において、都市工学科3年生 39人を対象に、県内建設企業が学校を訪れる出前授業「建設ゼミナール」が開催されました。 当日は、①やまぐち建設21の会の皆さんを講師とした校庭での出前授業「建設ゼミナール」と②建設企業11社及び山口県土木建築部の参加による建設企業合同説明会の2本立てで開催されました。 参加した生徒、教員、そして先輩社員、それぞれの立場から語られた言葉とともに当日の模様をお伝えします。 ※主催:山口県/共催:(一社)山口県建設業協会、(一社)山口県建築協会、やまぐち建設21の会
SPECIAL TALK 01
校庭が巨大な現場に。技術者たちとの対面
授業の始まりを告げるチャイムとともに、岩国工業高校の校庭はいつもの風景から一変し、巨大なバックホウや最新鋭の建設機械が並ぶ「生きた現場」へと姿を変えました。この日、教壇に立ったのは学校の先生ではなく、山口県内の建設産業を最前線で支えるプロの技術者たちです。
開会式では、県内建設企業の代表者から「今日は皆さんの先輩にあたるOBもたくさん来ています。プロの技術を肌で感じ、ものづくりの楽しさを存分に味わってください」と熱いメッセージが送られました。講師として参加した若手社員の中には、数年前まで同じ制服を着て岩国工業に通っていた卒業生も多く、後輩たちを前に少し照れくさそうに、しかし誇らしげな表情で挨拶をする姿が印象的でした。生徒たちは、普段の授業とは異なる緊張感と期待感に包まれながら、これから始まる未知の体験に向けて真剣な眼差しを向けていました。
SPECIAL TALK 02
伝統から最新技術まで。五感で学ぶ体験ブース
体験セクションでは、校内の各所に趣向を凝らした専門的なブースが設置されました。
の講師を務めたのは、やまぐち建設21の会の岩国エリアの会員企業である(株)ガンシン/(株)ミヤベ/(株)勝井建設/ガンシンテック(株)の4社の皆さん。
各社で活躍する岩国工業OBの若手社員7名も参加し、後輩たちへ熱心な指導を行いました。
土木体験プログラムは、以下の4種類が行われました。
①クレーン(13t)体験(重機試乗、吊り作業デモ)/(株)ガンシン
②建物診断体験/(株)勝井建設
③構造物取り壊し体験/(株)ミヤベ
④水路設置体験/(株)ミヤベ、(株)ガンシン
生徒たちはヘルメットを着用し、少人数のグループに分かれて各ブースを巡回。そこには、教科書の図面だけでは決して得られない「手触り」のある学びが待っていました。一つ一つの作業が街のインフラへと繋がっていく「ものづくりの醍醐味」を、生徒たちは五感を通じて学び取っていたようです。
SPECIAL TALK 03
企業インタビュー/株式会社勝井建設 中野樹さん(岩国工業卒業生)
「私はこの岩国工業高校の卒業生で、在学中にこの建設ゼミナールに参加したことが就職のきっかけでした。当時、学校に来てくださった建設会社の方々の雰囲気がとても良く、自分もここで働きたいと感じて入社を決め、今年で4年目になります。
その時に実際の工事現場の体験をして、いろんな話も聞くことが出来ました。ものづくりには興味があったので、建設に携わってみたいと思いました。今は、建設業で働いてよかったと思っています。
SPECIAL TALK 04
若手社員が語るリアルな日常を聞ける企業合同説明会も開催
体験学習の後は、教室に分かれて「建設企業合同説明会」が行われました。ここでのこだわりは、各企業から「できるだけ若手社員」を派遣してもらうことです。
あえて年齢の近い先輩が登壇し、「最初は自分も何も分からなかったけれど、研修や先輩の指導を経て少しずつスペシャリストに近づいている」といった等身大のエピソードを披露しました。失敗談も交えたリアルな話に、生徒たちは自分の数年後の姿を重ね、親近感を持って聞き入っていました。
SPECIAL TALK 05
学生インタビュー/都市工学科 3年生
普段は、主に土木に関する勉強をしていて、実習では機械を使って測量したり設計したり、CADを使ったパソコンの実習も行っています。私はもともと物を作ることが好きで、自分の手でみんなの役に立てるものを作りたいと思ってこの学校を選びました。
今日のイベントでは、いろんな企業の方々に来て頂いて、自分と目線も近い若手社員の皆さんの話を聞けたことは、これから本格的に行っていく進路ぎめにとても参考になる記帳な経験となったと思います。
SPECIAL TALK 06
インタビュー:都市工学科 柿本先生
この取り組みも4年目を迎え、産学連携の形として定着してきました。体験と説明会を組み合わせているのは、ものづくりの楽しさを実感した直後に、具体的な企業の話を聞くことで興味をより深めてほしいという狙いがあります。
あえて若手社員の方に来ていただいているのは、ベテランの方の話だと生徒がギャップを感じて『自分には向かないかも』と不安になってしまうことがあるからです。
この活動は生徒の職業観を育むだけでなく、保護者への口コミや学校の定員確保、さらには地元への人材供給という、地域全体のメリットにも繋がっています
今回の建設ゼミナールは、生徒たちが建設業の「かっこよさ」と「奥深さ」を同時に知る一日となりました。重機のレバーを握ったときの手応えや、測量機越しに見る正確な世界、そして何より現場で汗を流す先輩たちの誇らしげな姿は、どんな教科書よりも説得力のある学びとなったはずです。
建設業は、私たちの生活を足元から支え、未来の街を形作る非常に公共性の高い仕事です。しかし、その魅力を言葉だけで伝えるのは容易ではありません。今回のように学校と産業界が密に連携し、「見て、触れて、語り合う」場を継続していくことは、若者たちの職業観を育むだけでなく、地域全体の活力を維持する上でも極めて重要な意味を持ちます。
「いつか自分の手で街を作りたい」という純粋な憧れが、この日の体験を通じて確かな目標へと変わる。こうした地道な交流の積み重ねこそが、山口県のインフラを守り抜く未来のスペシャリストたちを育てる肥沃な土壌となります。今日この校庭で目を輝かせていた生徒たちが、数年後には立派な技術者として現場に立ち、次世代の後輩たちにその魅力を語り継いでくれる日が来ることを確信させてくれる、希望に満ちたイベントとなりました。
出前授業「建設ゼミナール」及び建設企業合同説明会(in岩国工業高校)