SPECIAL
TALK
08

特集記事

新たな働き方の取組!バックオフィスから現場を支える「建設ディレクター」

今、建設業界では、作業の効率化や就労時間の短縮といった働き方改革に積極的に取り組んでいます。そして、この働き方改革を大きく進める存在として、近年期待されている取り組みがあります。それが建設ディレクターによる取り組みです。 建設ディレクターとは、ITとコミュニケーションで現場とオフィスをつなぐ新しい職域です。データ整理、書類作成、ICT業務を行い、技術者とともに現場のチーム管理を目指します。 一般社団法人建設ディレクター協会の育成講座をオンライン受講し、修了テストに合格した人が建設ディレクターに認定されます。これまで現場の技術者は、見積づくり、工程管理表への記入、写真整理など、現場仕事の後も工事データ作成に追われていました。 建設ディレクターは、これらの工事データ作成を現場技術者から引き受け、ITとコミュニケーションスキルで現場とオフィスをつなぐことで、現場技術者の負担を軽減し、作業の効率化や就労時間短縮を図り、技術者がコア業務に集中できる環境を整えます。 さらに、この建設ディレクターは「デジタルスキルを活かせる」という魅力から、これまで建設業に触れたことのない女性や若い世代を中心に多様な人材の採用にもつながっているのです。山口県内でも、近年、建設ディレクターを導入している企業が増えてきています。 その中から、今回は山口市に本社を置く株式会社井原組さんと防府市に本社を置く山陽建設工業株式会社さんに、それぞれ導入した経緯や目的、実際の業務内容などをお聞きしました。 ※「建設ディレクター」は、一般社団法人建設ディレクター協会の登録商標です。(登録番号:第5939693号、第6327912号)

SPECIAL TALK 01

株式会社井原組 代表取締役社長 井原 昌二様

●建設ディレクター導入のきっかけや狙い、導入後の変化は?

建設業では、働き方改革というのは喫緊の課題でしたので、業務の分担等による働き方改革を目指す上で、建設ディレクターという新しい職域の仕事に大変魅力を感じて、導入することを決めました。
導入前は、広報活動やその他の書類作成なども含めて、現場の負担がすごく大きかったという印象を持っています。導入後は、書類作成を分業することで現場担当者の負担が減り、残業時間も少し減ってきたように思います。それと共に現場と内務との会話が増えて、業務が円滑になったと感じています。
また、弊社が力を入れているのが地域住民や小学校や中学校、高校に向けた建設産業の出前授業なのですが、そういった活動が積極的に実施できるような体制づくりにもつながっているように思います。

●どのような人が建設ディレクターとして活躍できますか?

現場の技術者や技能者または地域の方とのジョイントになる。つまり「つなぐ役目」になる立場なので、コミュニケーションの能力が長けているというところは大きなポイントで、人材として求める要素だとと思っています。
これまでは、「現場を1人で抱えてしまう」ということが課題でしたが、建設ディレクターの存在によって、相談できる窓口があることが現場にとっても大きな負担軽減や楽しみにもつながっているように思います。また、現場のモチベーションだけじゃなく、社内全体のモチベーションの向上につながっています。

●建設ディレクターとして働かれている方々や他の導入企業の方々へメッセージを

建設ディレクターという全く新しい職域において、職種としての細かいところまで決まったものがない形で、各社のディレクターさんも取り組まれていると思いますので、建設業界の中ではパイオニア的な存在なのかなと思います。各社、各個人がやりたいと思うことを積極的に取り組んでいただいて、新しい建設業が一般の方にも理解してもらえるような活動や動きになっていけばいいなと思っていますので、みんなで頑張っていきましょう!

●建設業未経験の方や建設ディレクター未導入の企業の方へメッセージを

建設業が大きく変わっていくタイミングですし、そのきっかけを各社が欲しているのが現状だと思いますので、今までの概念に囚われずに新しい領域にチャレンジしていくという思いのある企業さんがおられれば、積極的にディレクターを導入されて、新しい建設業のものづくりという形を模索していただきたいですし、是非いろんな情報交換をしながら一緒にやっていきましょうという思いでいます。
また、建設ディレクターの職域に興味をもっていただいている方や学生さんに対しては、今までの建設業にない職域なので、経験のない方でもチャレンジしていくことが可能な職域だと思いますし、楽しみながらできる職域でもあると思いますので、是非チャレンジしていただけたらと思っています。

SPECIAL TALK 02

株式会社井原組 建設ディレクター 岡村 愛香さん

●制度を導入すると聞いたときの感想、現在の仕事内容は?

私自身、総務として入社したため、建設ディレクター制度には全く馴染みがないというか「なんだろう?」っていう認識でした。正直、導入すると聞いた時は、「そうなんだ」っていうくらいの他人事に近いぐらいの感想でした。
現在は、建設ディレクターとして、主に広報・採用・測量の3つをメインに業務を担当しています。1日のサイクルは、現場からイベントだったり、学校に行って出前授業をしたり、現場に機械を持っていって代理人の方と一緒に機械を回したりと、1日現場に張り付いてる日もあれば、1日学校に行って建設業の魅力を伝えるっていう授業する日もあるといった感じで、本当に日々全然違う仕事をしています。
導入の効果としては、現場で今までは外注さんに頼んでいたICTが絡んだ測量などを、私ができるようになっているので、生産性の向上やコストダウンなどの効果が表れていると良いなと思います。

●制度を通じて自身の成長を感じたことや導入後の職場の変化は?

もともと総務で入社したので、基本的には事務作業が多くて建設業や現場の知識は本当に全くゼロでした。現場監督さんとお話をする中で、現場のことを言われると全く何を言ってるのか分からない状況のゼロベースからのスタートでした。それが今は、現場で測量をする際に、基準点やxyzなど今まで全く自分が理解できなかったことを自分が理解できていて、監督さんと会話が成り立つ時に、少しは成長したのかなと思います。
職場の雰囲気の変化としては、今までは総務は総務、工務は工務っていう形の業務内容でしたが、今は総務に建設ディレクターが3人いまして、書類や測量、広報を担当しているので、必然的に工務の方とその総務の方の会話が増えていくため、だんだん事務所内での輪が広がっているように思います。

●建設ディレクターの魅力は?

建設ディレクターの魅力は、職種自体ができて間もないというところもあり枠組みがないので、新しいチャレンジをしたいと思われている方にはとても魅力的な職種ではないかと思います。私は、書類の分担から入ったんですが、「CADを触ってみたい」って伝えたところ、社長から学ぶチャンスを頂くことができて、今は現場の展開図を書かせていただくようになりました。そこから「レーザースキャナーっていう測量機械もやりたい」と手を上げたら、またやらせて頂いて。そこから今度は3次元へと広がっています。
こういうチャンスを頂けるのも、建設ディレクターに縛りがないからこそで、自分がやりたいことをやりたいって伝えて、それが現場の人の負担軽減につながっていく。建設ディレクターって「こうじゃないといけない」がないので、自分からこういうふうにしたら、現場の人が楽になるんじゃないかなとか、こういうところにチャレンジしてみたいなっていう思いを生かせる職種ではないかなと思います。

●すでに建設ディレクターとして働いている方やこれからなる方へメッセージを

私も建設ディレクターという職種になってからまだ半年ぐらいなので、建設ディレクターとして働かれている方々に対しては、「これから一緒に建設産業を盛り上げていけるように頑張りたい」って思います。これからなりたいという方々に対しては、特にこの資格がないといけないという職種ではないので、縛りもないですし、未経験の方でも安心して目指して頂ける職種だと思います。

SPECIAL TALK 03

山陽建設工業株式会社 代表取締役社長 塩田 唯様

●建設ディレクター導入のきっかけや狙い、導入後の変化は?

建設業は現場の作業が終わった後に事務所に戻ってから内業の時間というものがあります。その時間がどうしても残業になってしまうことが多かったのでそれを是正しようというのが導入のきっかけです。建設ディレクターの方々が、日中に例えば現場で写真を撮ったり、発注者様に書類を提出するなような時間を短縮し、みんなで働き方を改革していこうという狙いがあります。
導入してからまだ間もないため、実際に効果というものは上がってきてはいないようなのが現状なんですが、導入前にはいろいろな意見がありました。社員のみんなにも建設ディレクターというものがどういう仕事なのかということを聞いていっていただいた結果、現場の方からも早く導入して活躍してもらいたいという意見が上がってきているような状態です。

●建設ディレクターに期待している役割とは?

現場での作業時間の短縮を求めています。現場の方々のコミュニケーションの時間を増やしてもらったり、技術の継承に充てる時間を少なくなった時間に新しい動き方をしてもらえればなと思っています。
建設ディレクターの方々が、今まで社員のみんながやっていた仕事を肩代わりしてくれることによって、既存の社員みんなの時間が空いてきているように感じています。それによって、今まで目が届かなかったようなところにも目が届くとか、その時間を活用して新しい仕事に取り組んでいくような環境が、どんどん整備できているんじゃないかと思います。

●建設ディレクターとして働かれている方々や他の導入企業の方々へメッセージを

建設ディレクターは、建設業には珍しい新しいスタイルの働き方だと思っています。
少子高齢化で人材確保が皆さん課題になっているかと思うんですけれど、建設ディレクター制度は、そういった問題に対する1つの答えだと考えておりますので、是非前向きに取り組んでいただければと思います。

●建設業未経験の方や建設ディレクター未導入の企業の方々へメッセージをお願いします

これまで建設業に興味のなかった方や、あまり繋がりのなかった方も建設ディレクターという職種は少し今までの形とは違った職業スタイルになるかと思いますので、女性の方や建設業に特化した学生生活をしてこなかった方も参加していただける新しい建設業の働き方のスタイルになると思います。ぜひ、今まで建設業が自分にはできないだろうと思われた方々も進んでチャレンジしていただければ、非常に楽しい仕事になるのではないかと期待しています。

SPECIAL TALK 04

山陽建設工業株式会社 建設ディレクター 大田 菜月さん

●建設産業を就職先に選んだきっかけや建設ディレクターの話を聞いたときの感想は?

私は大学で歴史を学んでいましたので、神社にも興味を持っていたんですけど、そういった伝統建築にいつか携わることができたらいいなと思ったことがきっかけです。
入社の前の面接で、建設ディレクター制度をこれから導入することや、それを受けてほしいということをお聞きしたんですが、その時に現場代理人の方が残業で書類作成業務をなさっているということを知り、そういった面を減らしていけたらいいなと思い、建設ディレクターを受けてみようと思いました。

●具体的な仕事内容や日々の業務のやりがいは?

現在は、建築現場の安全書類作成を担当しているんですが、業者さんに出していただいた全書類を確認して、内容に不備がないかを調べています。少しでも現場代理人の方の役に立っているという気持ちが、やりがいにつながっていると思います。
私は、建設業とはまったく関係ないところから入社しましたので、見るものすべてが学びといいますか、工事の過程1つ1つに対しても、すべて色々なことが真新しく感じて、そういった面ではたくさんのものが学びにつながっています。

●建設ディレクターの魅力とは?

建設ディレクターは、現場代理人の役に立つ存在です。そういった面でとてもやりがいがある仕事だと思っています。また、他社の建設ディレクターさんの中には、ドローンを使って測量をなさっている方もいらっしゃいまして、そういったいろいろな業務の可能性がある職種だと考えておりますので、そこが魅力だと思います。

●建設ディレクターは、どんな人に向いていると思いますか?

私は、パソコンの作業がとても多いので、そういったパソコンの業務が苦ではない方は向いているのではないかと思っています。

●すでに建設ディレクターとして働いている方やこれから目指す方へメッセージをお願いします。

私は、入社前は全く建設業に関わりがなかったので、知識が少し足りないんじゃないかと不安を感じていました。でも、業務を行うにつれて、だんだんと知識も身についてきましたので、知識がなくて不安だという方も、さほど気にせずにいていただけたらと思っています。

山口県では「建設ディレクター」導入企業を支援する研修事業を実施しています。
※詳細は、募集時期になりましたら、当サイトの新着情報等でお知らせします
<問い合わせ先>
山口県土木建築部監理課建設業班
TEL:083-933-3629

新たな働き方の取組!バックオフィスから現場を支える「建設ディレクター」

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